海外で働いていると、日本の時のように理容競技会に参加したり、理容師美容師向けセミナーのような技術勉強会に参加したりする機会がないので、時々日本の人気カリスマスタイリストさんとかのブログを見たりして、最新情報をチェックしたりしています。
最近こういうテーマで書かれたブログ記事を見かけました。
「美容師はなぜ話しかけてくるのか」
もちろん美容師に限らず「理容師はなぜ話しかけてくるのか」とも言える、ちょっと気になる話題だったので、本ブログで紹介してみたいと思います。
インターネット上で時々「美容師との会話が苦手」とか「美容師が話しかけてくるのがうるさい」「話しかけないで欲しい」とかいう話題を見かけることがあります。
ヤフー知恵袋で、どうすれば美容師に話しかけられないかという知恵を出し合っているQ&A見かけたこともあります。^^;)
数的にはそれほど多くは無い気がしますが、一定数「美容室では会話したくない」という方もいらっしゃるようです。
そういう背景をうけて、その美容師ブロガーさんは
「話しかける理由、それはお客様のことをもっと理解したいから」
という答えを出していました。
「お客様のことを理解してこそ、良いヘアスタイルも提案できる」という、同業から見ても優等生的な模範解答を出しておりました。
その回答は、私も同意できるところもあります。
例えば理容室での男性のお客様であれば、「適当に短くスッキリお願いします」という超簡潔な1文だけの注文を頂くことがあります。
「適当」と言っても、決して「いいかげんに」という意味ではなく「(自分自身の雰囲気に)うまく合うように」という意味の筈なので、そのお客様の顔や体型、服や雰囲気を見て似合うヘアスタイルを探りながらカットをします。
その時、外見だけの情報だと心もとないので、その方のお仕事や、既婚か未婚か、どんな趣味をお持ちなのか等を、アンケート調査のような質問形式ではなく、自然な会話の流れから拾って取り入れていこうとします。
お役所や金融関係のお仕事をされている方と、広告イベント業界やアパレル業界などで働いている方との「相応しい髪型」は当然違ってくると思いますし、会社トップの総経理や董事長、毎日お客様と接する営業部門、社内でお仕事をする管理部門とでは、ヘアスタイルのアレンジができる幅も違ってきます。趣味で格闘技をやっている方と、アニメやコスプレが趣味という方とかも、好みが違ってくると思います。
美容師自身もお客様とのコミュニケーションを自然に楽しみつつも、会話をする中からお客様に満足して頂けるヘアスタイルのヒントを探りながら施術をしていきます。
以上は優等生的な回答ですが、私が今まで色んなスタッフと働いてきた経験からすると、他にはこんな理由で話しかける美容師さんもいると思います。
1.技術がまだ未熟なのを人柄でカバーしようと頑張っている
2.ただ単に会話が好き、または沈黙に耐えられないタイプである
3.お店の方針や店長の教育で「とにかく会話して仲良くなれ」と言われている
4.店内スタッフ同士の人間関係が悪く険悪で緊迫しているので、お客様との会話だけがひと時のオアシスである
5.そのお客様に好感を持っている
6.カットが終わってから「もっと短くして下さい」とならないよう、カットの最中にでも「その辺もっと短く」と気軽に言える雰囲気を作ろうとしている
7.超久しぶりにお客さんが来たので、人と話がしたくてしょうがない
…等々でしょうか。
それでは、私の場合「美容師(理容師)はなぜ話しかけてくるのか」という質問にどう答えるか。
上記の美容師さんに対して後出しじゃんけんにみたいになってしまいますが、私は「美容師(理容師)は話しかけてくる、という前提自体が正しくないです。全く話しかけないこともありますよ。」という、ちょっとひねくれた回答を出したいと思います。
少ない割合ではありますが、肌感覚的に20~30名に1名ぐらいは、カットの注文を聞いた後、一言も会話しないというケースもあります。
もちろん、私自身の機嫌が悪かったとか、そのお客様が好きじゃないとか、そういう理由では決してありません。
接客中には深く意識はしていませんが、考えてみると、その根本では「お客様が求めているものをご提供する」という「商売の基本」の実践をしている気がします。
お客様は床屋さんに髪の毛をカットするためにご来店して頂いていますが、必ずしも全員が「私に似合うオシャレなヘアスタイルを提案してもらう為に来たのだ」と思って来ている訳ではありません。
「伸びた分だけ髪を切ってくれればそれでいい。会話は嫌いだ。」
「だらだら話してないで最短時間でカットを終わらせて欲しい。黙って早く切ってくれないか。」
「鋏が髪を切るシャキシャキという音を聞きながらウトウトするのが至福の時なんだ。そっとしといてくれ。」
といったものを求めてご来店頂いてるお客様もいらっしゃいます。
こういったニーズのお客様に対して、今の流行のヘアスタイルはこういうスタイルで、こういう最先端のカラー剤も出ていて、お客様の骨格はこの様になっているので、今回思い切ってイメチェンして、こういうヘアスタイルでいくのはどうでしょう?!と熱く提案しても、それが確かに流行の髪型の提案だったとしても、そのお客様にとっては無駄でうるさい提案にしか過ぎません。
床屋は髪を切るところですが、「髪を切る」こと以外のところにニーズがあるお客様がいらっしゃいます。
特に、当店もそうですが、シャンプー後のヘッドマッサージやお顔そり(当店ではオプション)を提供する「床屋さん(理容室)」の場合、「リラックス」「リフレッシュ」を求めてご来店頂くお客様も多いです。そういうお客様の中には、別に会話が嫌いという訳ではないけれども、とにかく頭も休めてボーッとしていたいという方もいらっしゃいます。
ですので、話しかけない方が良いかなと思ったときには、終始無言でカットします。
これもある種の賭けのようでもあって、「話しかけないでね」とお客様がハッキリおっしゃった訳ではないので、実は話好きの方で、「あそこの床屋は一言も話さない。なんて愛想悪いんだ!」と思われてしまわないかな、という不安も時々あります。
でも、今までの会話無しのお客様もリピーターとして来て下さっているので、予測はたいてい当たっていると思っています。
ちなみに、美容師に対して「話しかけて欲しくない」という事を伝えるサインがあります。
冒頭のヤフー知恵袋などで、美容師さん達も回答者として同じような事を書いていたので、日本人の理容師美容師であれば、多分共通で伝わるサインです。
1.目を閉じる(寝たふり) 効果:最強
2.雑誌を読む(スマホも可) 効果:有り
3.何か聞かれても「はい」「いいえ」以外答えない 効果:空気読める美容師には効果有り
この3つです。
これを実践してみても、鬱陶しくも次々と話しかけてくるような美容師さんでしたら、きっと技術の方もズレた提案しかできないと思いますので、もうそこには行かない方が良い気がします。
逆に、お客様の方からお店についての事や、美容師本人の事について質問をすると、「興味を持って頂いた!」「質問してくるという事は会話も好きに違いない」と受け止め、その後どんどん話をしてくることになるかと思います。
美容師や理容師の場合、基本的には話好きで、個人的なことを質問されることは苦ではなく、むしろ大歓迎なので、会話好きな方は何か適当に質問を投げかけるとスイッチが入って、最後まで会話が弾むことになると思います。
お話好きの方は、ぜひお試し下さい!
以上、「美容師はなぜ話しかけてくるのか」を話題にしてみました。